院試勉強

 

 院試について書きたいと思います.淫試ではありません.

 

 院試は学部入試に比べると簡単とか余裕とかよく聞きますけど,僕は必ずしもそうではないと思います.どちらも人生がかかっていますし,僕は院試勉強も結構頑張ったつもりです.

 勉強期間で言うと,確かに学部の大学入試の方が入試の一年前から「受験生」なんて呼ばれて受験勉強をはじめるわけですから,それに比べると1か月ちょっとの勉強で本番を迎えた院試勉強は期間がはるかに短いでしょう.

 しかし,1日の勉強時間では僕の場合院試勉強の方がはるかに長いです.僕は大学受験の時は1日に3か4時間,長くても6時間くらいでしたけど,院試勉強を本格的にしていた1か月間は1日11-12時間くらい勉強していました.

 受かってみた今,はたしてそれだけやる必要があるかと問われると,それはもうその人が受ける研究室,やりたい研究分野によるとしか言えません.

 たとえば,物理の花形である素粒子宇宙理論系の研究室を目指すのであれば,筆記試験は9割くらいとらないといけないと聞きます.研究室の定員に達してなくても水準未満なら平気で落とします.物理の理解が不十分な人間が入っても成果が期待できないということだと思います.

 一般的に,物理の研究室は理論と実験に二分されますが,そのうち理論の研究室は基本的に筆記試験は高得点が必要と言われます.理論系志望の人は基本的に内部性だけでなく外部生との競争になります.先に挙げた素粒子宇宙系の理論は特に熾烈で,僕の知り合いでもほとんどの人が,いくつかの大学院を併願していました.ぼくのような実験志望で内部受験onlyな人間とはちょっと住む世界が違う感じがします.

 また,実験の研究室でも大きな成果をいくつもあげているような有名研究室だと,外部からも受験者がいて競争になります.実は,僕が今いる研究室もそうで,どこからともなく外部受験生が複数いるらしいという噂が聞こえてきて,内部生の同期も優秀な人ばかりだったので,これは本気でやらないとマズいと思って頑張りました.結果的には,僕含めた内部生がそのまま全員合格したので,外部の人が本当に受けたかどうかもわかりません.

 

 大学院入試の構成は,大抵のところが筆記と面接の2部構成だと思います.

 筆記の科目は,それぞれの学部学科の専門で習った数科目 + 英語 です.うちの大学の場合ですと,数学,力学,電磁気,量子力学,熱力学,統計力学,それと英語です.というか物理学科はどこもこんな感じです.最近は英語の試験が,TOEICTOEFLなど外部試験のスコアシートの提出させて点数にするところが増えてきています.うちの大学は普通に独自問題でした.

 面接は,受験生がそれぞれ大まかな志望毎の面接グループに分かれて行われます.たとえば物性理論,とか素核実験,とかですね.面接グループ毎に訊かれる内容は異なります.理論の面接では,受験生が黒板の前に立って,その場で出された物理の問題を解くことを要求されます.「こいつ本当に物理分かってんのか?」という見極めをされて,ダメなら落とされます.実際に面接で落とされちゃった知り合いもいました.その人は本命の他大学に無事合格されたので結果オーライでしたけど.

 一方で,実験系の面接は理論のそれと比べるとかなり平和です.問題も出されませんし,志望動機とか,その場で普通に受け答えできる質問だけです.僕が面接で訊かれた質問は,

*) 配属志望の研究グループの確認

*) そこを志望する動機

*) 筆記試験の手ごたえ

*) (願書の博士課程への進学意思欄に有と書いていたので)博士をとった後はどうするか

*) 志望先のグループは海外の研究施設で実験する研究室だが,どう思うか

これだけです.時間にして5分もかからずにあっけなく終わりました.実験系が志望の場合は,面接はこんな感じで簡単に質問されるだけなので,合否はほぼ筆記の点数で決まるのではないかと勝手に思っています.

 

 それで,ぼくが具体的にいつごろからどんな風に勉強してたかという話に入りたいと思います.

 院試あるなー勉強しないとなー,と4年に上がった4月の時点では思っていましたけど,院試勉強という具体的な行動を取り始めたのは6月の頭からでした.

 僕は教職課程をとっていた関係で,5月の半ばから終わりにかけて地元の†母校†で教育実習をしていました.それが終わって6月の頭に仙台に戻って来てみると,なんと僕のいない間に友人たちが院試過去問ゼミなるものを始めているではありませんか! それで「なんだそれ! 俺もまぜろ!」といった具合で加入することになりました.

 院試ゼミは,毎週末に大学の談話室に集まって解いてきた過去問の解答を発表しあう形式でした.毎週,1年度分のうちの半分を解くペースで,発表は1人が大問1こという割り当てでした.

 セメスター中は普通に講義もとっていたし,研究室のゼミやらオープンキャンパスやらもあったので,院試ゼミ以外の勉強はしていませんでした.途中,僕の身内で不幸があったため急遽帰省することになるなど参加できなかった回もありましたが,院試ゼミに参加することで割と早い段階から一定のペースで問題に触れることができました.

 本格的に勉強を始めたのは,前期のセメスターが終わった8月初めからでした.院試ゼミの頻度も週2回に増え,院試を考慮して研究室での作業も完全に無くなったため,完全に没頭することができるようになりました.朝6時に起きて,研究室の居室に7時には居て勉強を始め,途中で食事や休憩も挟みながら夜の9時くらいまで大学にいたこともありました.途中,集中が途切れてる時間もありますが,1日10時間は勉強してたと思います.週2回のゼミ用の過去問+自習用の何かを延々と繰り返していました.それだけ危機感があったのでしょう.

 過去問は,本番1週間前までには東北大のWebに上げられてるもの全て+研究室の本棚から発掘した2, 3年分は解ききっていました.他に僕が自習用にやったものは,

*) 数学: 過去問のみ.良問多し

*) 力学: 特に無し.オイラー=ラグランジュ方程式で殴る

*) 電磁気: 大学の電磁気演習の配布問題を2周する

*) 量子力学: 日笠健一 著『量子力学』(朝倉書店) の5-82頁を暗記する

*) 熱力学: 三宅の熱力学を復習

*) 統計力学: 大学の統計演習の復習

*) 英語: 無駄な抵抗はやめる

こんな感じのことができれば,うちの大学の問題レベルならまあまあ解けると思います(英語以外は).実際には分からない時は他にもいろんな教科書を参考にしながら勉強してました.特に熱はかなり忘れてる部分があったので,一から勉強し直すはめになりかなり時間がかかりました.こうして並べるとどれもかなり初歩的だなあという印象ですが,僕の実力不足です.

 もっと進んだ人,素理論とかに行きたい人は詳解電磁気演習とか久保の熱統計とかそういうもので勉強すると良いと思います.

 

 そうして1か月自分なりに頑張ったところ受かりました.受かりたいところに受かって良かったと素直に思います.

 自分が行きたい研究室に確実に行くためには,それなりの努力が必要だと思います.周りより点数足りないと違うところに飛ばされちゃいます.

 ですが,うちの大学の場合だと全体の倍率はほぼ1.0倍に近く,どこでもいいのでとりあえず大学院にいければいいやという人にとっては,やはり院試は楽勝かもしれません.